所得拡大促進税制について(2021/11/2)
はじめに
令和3年度税制改正において、中小企業向け所得拡大促進税制の見直しが行われました。改正前に比べ、適用要件が緩和されたため、煩雑であった集計・計算方法が簡略化され、従来よりも利用しやすい制度となったといえます。
所得拡大促進税制の概要
所得拡大促進税制とは、青色申告書を提出している中小企業者等が、一定の要件を満たしたうえで、前年度より給与等の支給額を増大させた場合、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から控除することができる制度です。
対象期間は、令和3年4月1日から令和5年3月31日までの期間内に開始する事業年度(個人事業主については、令和4年から令和5年までの各年が対象)となります。
適用要件
雇用者給与支給額が前年度と比べて1.5%以上増加していること
雇用者給与支給額とは、適用年度の全ての雇用者に対する給与等の支給額をいいます。
必ず前年度の期首から在籍している必要はなく、新規雇用者や中途採用者も含まれます。ただし、役員等は除きます。
前年度及び適用事業年度の雇用者給与支給額により判定をするため、継続雇用者給与等支給額の集計が不要となり、改正前に比べ判定が容易となり、かなり事務負担が軽減されることになります。
税額控除の計算方法
雇用者等支給額の対前年度増加額×15%
※ただし、税額控除額の上限は、法人税額又は所得税額の20%
たとえば、従業員の新規雇用、既存の従業員のベースアップなどで雇用者等給与支給額が2,000万円から2,500万円になったとすると、増加額500万円×15%で75万円が法人税額×20%を上限として法人税額から控除することができます。
なお、以下の①かつ②の要件を満たす場合には、15%が25%に変わります。
①
雇用者給与等支給額が前年度と比べて2.5%増加していること
②
以下、A・Bのいずれかを満たすこと
A. 教育訓練費が前年度と比べて10%以上増加していること
B. 経営力向上が確実に行われたことにつき照明がされていること
教育訓練費とは、雇用者の職務に必要な技術又は知識を習得させ、又は向上させるために支出する費用のうち一定のものをいいます。
具体的には、法人等が教育訓練等を自ら行う場合の費用(外部講師謝金、外部施設使用料等)、他の者に委託して教育訓練等を行わせる場合の費用(研修委託費等)、他の者が行う教育訓練等に参加させる場合の費用(外部研修参加費等)が該当します。
経営力向上の照明については、経営力の向上が行われたことに関する報告書を作成し、経済産業省に提出することが必要になります。
留意点
今般の新型コロナウイルス感染症拡大の影響のなかで、中小企業等が交付を受けた雇用安定助成金の取り扱いは注意が必要であり、適用要件の判定及び上乗せ要件の判定については、当該助成金を雇用者給与等支給額から控除せずに判定しますが、税控除額の計算については雇用安定助成金を控除して計算した金額が上限となります。
※雇用安定助成金とは、雇用調整助成金、産業雇用安定助成金、緊急雇用安定助成金が該当し、当該助成金に上乗せ支給された助成金、その他の雇用安定助成金に順じて地方公共団体から支給される助成金をいいます。
引用元:税理士法人 エム・エイ・シー
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